物流業界の2024年問題について(JLPA機関誌 Vol.60 No.2,2023掲載)
本記事は、JLPA機関誌『ガスプラント』 Vol.60 No.2(2023), PP.19~20に掲載したものを著作者様の同意を得て掲載させていただいております。
日本車輌製造株式会社
輸機・インフラ本部 営業第一部
第一営業グループ 原 祐治
1. まえがき
日本車輌製造株式会社 輸機・インフラ本部(輸機部門)では,衣浦製作所(愛知県半田市)を製造拠点として,LPガスタンクローリ・LPガス貯槽を始めとした高圧ガス製品,重量物運搬台車(キャリヤ・AGV),貨車・コンテナ等の製造・販売を行っております。
日々の営業活動の中で,LP ガスタンクローリを運用される通運事業者様より2024 年問題について危惧されるお話を戴く機会が増えてまいりました。その概要につきまして改めてご説明するとともに,通運事業者様から戴いたご意見(問題・課題・ご要望の一部)をご紹介させていただきます。
2. 概要
「物流業界の2024 年問題」(以下,2024 年問題という)とは,働き方改革関連法により,2024年4月1日以降,自動車運転業務における時間外労働時間の上限が960時間に制限されることで物流業界に生じる問題の総称です。(働き方改革関連法に伴う「時間外労働時間の上限規制」は2019年4月より段階的に施行,「自動車運転の業務」は5年間猶予)また,労働基準法関連では,2023年4月1日以降,月60時間超の時間外割増賃金率の引上(25%→50%)が中小企業にも適用されます。(大企業は2010年4月1日適用済)
全日本トラック協会様HP掲載資料引用
3. 詳細
《ドライバー不足》
先ず,大型免許保有者の人数・年齢層について過去20年の推移を下記グラフでご紹介いたします。
警察庁HPより集計(過去20年)
保有者数は2007年をピークに徐々に減少,またその年齢構成は大きく変化しております。
大型免許保有者の年齢構成
2021 年の年齢構成について,2002年(20年前)と比較して,65歳以上の保有者は全体の33%まで増加,一方40歳未満の保有者は全体の12%と大幅に減少していることがわかります。ドライバー不足は今後更に加速することが確実な状況です。
このような状況下,通運事業者様から以下のご意見(問題・課題,要望事項)を戴きました。
《労働時間の制約,残業時間短縮に伴う問題・課題》
◇輸送能力が低下する。時間指定納入や立合納入が難しくなる。
◇ドライバー収入が低下,他業種へ人材が流出する
◇LPガスの安定供給確保のため,トラック等の増車,ドライバーの賃金改善,労働環境の改善(休憩所の改修他)等が必要となり,固定費が増加する
→ 輸送事業存続の危機である
《要望事項》
◇LP ガス輸送運賃の見直し(安定供給確保のため)
◇LP ガス輸送の効率化への諸対応
・一次基地(二次基地)の改修(充填レーン,トラックスケール拡充等),受入時間の拡大・入場システムの導入等
→待機時間の解消,車両の大型化
・二次基地(充填所)の改修 ①(入り口,進入路,停車スペース等)
→特殊サイズのローリから標準型へ車両統一化,車両の大型化
・二次基地(充填所)の改修 ②(貯槽の大型化)
→貯蔵能力に余裕が生じて平準的な配送が可能になる,車両の大型化
→ 輸送量の増大(一運行あたり)が期待できる
4.まとめ
LPガス業界は季節による繁・閑差が激しいこと,また一般貨物と異なり片道しか荷物(LPガス)を輸送できない等特有の問題もありますが,労働環境の改善,輸送の効率化等が喫緊の課題と言えます。
ガス事業者様におかれましては,LPガス業界全体の問題と,ご理解・ご配慮賜れれば幸いです。