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新コスモス電機における安全への取組み(JLPA機関誌Vol.58 No.4, 2021掲載)

本記事は、JLPA機関誌『ガスプラント』 Vol.58 No.4(2021), PP.15~18に掲載したものを著作者様の同意を得て掲載させていただいております。


新コスモス電機株式会社 コスモスセンサセンター
福田 和弘

1. まえがき

 新コスモス電機株式会社は1960 年の設立以来,独自のガスセンサ技術を用いて家庭用ガス警報器,工業用定置式ガス検知警報器,携帯用ガス検知器,さらにはニオイセンサとその応用商品を開発し,LPG 業界をはじめ幅広い分野でお使い頂いております。近年では,IoT を活用したガス警報器や検知器などの新製品に加え,二酸化炭素を検知してコロナ禍の三密対策に役立つ機器の販売など新たな領域へも展開しています。
 創業当初からの「世界中のガス事故をなくしたい」という使命のもと「センサテクノロジーで,安全・安心・快適な環境創りに貢献する」をスローガンに掲げております。
 コスモスセンサセンターは,当社キーデバイスであるガスセンサの工場ですが,単なる生産工場でなく,技術開発を含めたセンサの中核施設と位置付けています。今回は,コスモスセンサセンターの現場作業における安全への取組みを紹介させて頂きます。

2. 概要

 基本方針として「計画的な安全衛生の取組みにより災害発生を未然に防止する」を掲げ,年間安全衛生計画を立て安全衛生活動へ取組んでおります。

3. 詳細

 安全衛生活動として取組んでいる内容についてポイントを絞りご紹介します。

1)職場の安全衛生意識の向上を図る

 期初の安全衛生委員会開催時には,過去の労働災害から得られた教訓を再確認します。目で見てわかる不安全要素について,「現場に存在する顕在化した安全管理・衛生管理におけるチェックリスト」で確認し,従業員が健康に働くことができるよう環境整備を実施しています。

①安全パトロールの職場巡回

 安全パトロールの巡回は,年3 回の長期休暇前に実施しています。日頃監察ができていない場所(構外,機械室等)を含む構内全エリアにて実施し,是正箇所を担当部門へ報告し速やかに処置内容を確認します(写真1)。
特にパトロールでチェックすべき点を示します。
・危険状態と危険行為の指摘と改善
・設備・機械などの保安状況
・作業現場の5S 状況
・第三者に対する設備・防災対策状況

写真1 安全パトロール職場巡回

②衛生管理者,安全管理者の職場巡視

 毎週1 回作業場等を巡視し,設備,作業方法もしくは衛生状態に有害の恐れがある際は,必要な措置を講じ,都度是正処置の内容を確認しています。

2)災害・事故の想定と対応

 対処方法として類似災害防止活動への取組みを実施しております。

①各部署(連絡書,改善活動の有効活用)

 「自発的に改善活動を行ってもらい,やりがいと達成感を得てもらう」を目的とし,『全コスモス改善促進活動(ACIP)』を実施しています。昨年は147 件の改善策が提案され,ヒューマンエラーにおいては前年度比で60%減と改善効果を発揮しています。その内10%が安全衛生面の提案に該当しており,事故の再発防止策へ効果が出ております。

②ヒヤリ・ハット/安全提案の提出

 下記,工場からの安全管理における提案を報告致します。

◆ドア向こうの「見える化」による衝突災害防止策
 作業場の扉を急に開けた際,扉の外側にいる人と出会頭の衝突を避けるために,扉に「ドア開閉ランプ」を設置し注意喚起表示を行っています(写真2)。

写真2 ドア向こうの交差点衝突防止策

◆構内右側通行表示強化と曲がり角での衝突防止策
 構内廊下の曲がり角での衝突が発生したことで,廊下・階段へ右側通行表示を掲示(写真3),曲がり角の床には通行マークを設置し注意喚起を行っています(写真4)。

写真3 右側通行表示を掲示

写真4 通行マークを設置

3)職場における労働衛生

 働く人の健康維持のために,職場の労働条件や作業環境を改善する取組みを実施しています。その主な対策は,「作業環境管理」「作業管理」「健康管理」の3 つで,悪影響を及ぼす原因を把握して働く人にとって良好な労働環境を保ち,健康に働くために必要な措置を講じています。

①作業場所の環境測定

 製造・開発現場には,弊社の高感度の環境モニタを68 台設置し,室内が一定環境であることを常に監視しています。下図(図1)に示すよう定点監視とトレンドグラフによる見える化を実施し,VOC 濃度の把握による従業員の健康被害管理にも役立てております。

 

図1 定点監視とトレンドグラフによる見える化

②照明設備定期点検

 年1回の照明設備定期点検を実施し,適正な明るさ,安全に仕事ができる作業場の整備を行っています。それにより,作業姿勢を適性化して,従業員の負担を少なくすることに努めています。

③新型コロナウイルス感染対策

 オフィス,共有施設等(会議室,食堂)には,弊社の「三密おしらせシステム 換気予報」を設置し,室内の二酸化炭素の濃度を計測し換気状況および混雑状況を見える化しています。
 また出社・退社時の検温は,「体温測定機能付き顔認証端末」を導入し,検温のセルフ化/省人化が可能となりました。食堂は,時差利用と飛沫飛散防止パネルの設置を実施し感染対策をしています。

4)リスクアセスメント

 「化学物質リスクアセスメント分科会」を発足させ,化学物質の持つ危険性や有害性を特定し,従業員の危険または健康障害を生じるおそれの程度を見積り,リスクの低減対策に取組んでおります。

①法規制対応の評価の実施

・物質管理表示や取り扱う人の把握と管理者の明確化
・ハザードレベル = 物質自体の有害性
・ばく露レベル = 作業環境の汚染状況(気中測定)

②試薬管理システムの導入・運用の実施

 本年度より,試薬を取り扱う現場担当者への作業負担と試薬管理の強化を目的としたシステムを導入し,データベースによる運用を実施しています。運用例としては,試薬の使用前後に専用の電子天秤で秤取るとサーバーに試薬使用量がデータとして蓄積されます。また,所有している試薬ごとにSDS データを対応させることが可能です。現在はコスモスセンサセンターのみでの運用ですが,全社対応を想定したシステムを構築しており,今後管理体制の統一化を目指します。

5)安全衛生教育

 従業員の就業にあたり,必要な安全衛生に関する知識等を付与する目的で教育訓練を計画的に運用して,労働災害防止に努めています。

①社員安全教育の実施

 安全衛生委員会メンバーを対象に年1回の安全教育を実施しています。また,新入社員や派遣社員の雇い入れ時には随時実施をしています。
・一般的な安全衛生教育(法定教育を補完する教育又は事業場独自のルールの教育)
・労働安全衛生法及び関係法令や規制についての一般的な知識
・社内安全衛生規則や基本ルール,安全心得
・職場の一般的な知識(製造工程の概要,設備構造,作業方法等)についての一般的な安全衛生知識
・職場の安全衛生の知識(安全ルール,保護具の種類及び使用方法,使用している物質のMSDS,保護具の種類及び使用方法,作業環境測定など)
・異常時の処置ルール及び災害発生時の対応方法
・安全運転講習

②防災訓練の実施

 災害時の適切な対応を目的として,近傍消防本部立会にて年1回防災訓練を実施しています(写真5,6)。
今後の課題としては,初動消火を考慮した屋内消火の訓練を検討しております。

写真5 屋外消火栓操作訓練

写真6 消火器操作訓練

③必要な資格取得

 能力向上教育計画に基づいて従業員の資質の向上を図ること,さらに業務に必要な資格を取得することを目的に実施しています。
 主な資格を下記に記載します。
・有機溶剤作業主任者:11名 ・特定高圧ガス取扱主任者:29名 ・特定化学物質等作業主任者:7名

6)高圧ガスの取扱い
①新規講習,年1 回の資格更新講習

 高圧ガス容器からのガス採取作業および圧力調整器の取扱いにおいては,教育・訓練を実施し,資格制度をもって安全を確保した運用を実施しています。

②ライフゼム(自吸式呼吸器)取扱講習

 メーカでの年1 回の設備点検実施時に,該当する従業員へのライフゼム取扱講習会を実施。

4. まとめ

 安全衛生における基本方針として「災害発生を未然に防止する」を掲げ活動をしていく中で,全従業員が労働安全衛生法をはじめ,関連法令やマニュアル,作業手順を順守すると共に,一人ひとりが「決められたことは必ず守る・守らせる」という職場風土を形成することが最も大事であると感じています。
 今後も,職場における安全意識及びKY 能力向上の活動として「風通しの良い職場づくり・健康づくり」を実施し,全従業員が健康で安全に働くことができる職場環境の実現に向けて取組んでまいります。