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Human Resource Development
シリーズ人材育成

矢崎エナジーシステムの人材育成「液化石油ガス設備士養成講習」について(JLPA機関誌 Vol.61 No.3,2024掲載)

本記事は、JLPA機関誌『ガスプラント』 Vol.61 No.3(2024), PP. 7 ~ 8に掲載したものを著作者様の同意を得て掲載させていただいております。


矢崎エナジーシステム株式会社
ガス機器事業部 管理部 DX推進チーム 杉浦 高寛

1.まえがき

 矢崎エナジーシステムは,電力用電線や通信用電線等の電線事業,空調や太陽熱の環境システム事業,タクシーメーターやデジタルタコグラフ等の計装事業,ガスメータやガス警報器等のガス機器事業を柱とし矢崎グループの生活環境機器の開発,製造,販売を一貫した体制で行っております。
 エネルギー社会が変化する中,多様なエネルギーを最適に活用する製品,サービスを提供することにより地球を含む生き物にやさしい環境づくりを考え「あらゆるエネルギーの総合プロデュース企業」として,お客様や社会に貢献していきたいと考えています。
 ガス機器部門の始まりは,1963年に国内で初めてLPガスメータLP10を販売した事から始まり,現在ではLPガスメータ,都市ガスメータ,LPガス警報器,都市ガス警報器,調整器,ベーパライザー,バルク貯槽等ガスを安全にご利用いただくための機器,サービスを提供しており,また全国にガス機器サービス指定店を配置し工事,メンテナンス,サービス体制を整え,お客様のニーズにお応えしております。
 本稿におきましては当社の人材育成取り組みの一つである「液化石油ガス設備士養成講習」をご紹介させていただきます。

2.概要

 当社のガス機器製品は,ガス販売事業者様を通じて消費者様にご利用いただいており,ご使用に際しては設置工事が必要になる製品が多くあります。工事にあたっては国家資格である「液化石油ガス設備士」(以下設備士)資格が必要となることがあり,当社にとってガス機器製品販売と資格者の養成は,車の両輪のごとく大切な事となります。
 当社では設備士の国家資格取得者養成を目的として1981年経済産業省認定の養成施設である矢崎ガス機器トレーニングセンター(通称ブルドック研修センター)を静岡県浜松市に設け年4回設備士養成講習を開催しております。
 設備士養成講習受講生は主にお取引先のガス事業者様,ガス事業者様紹介の工事業者様,当社の新入社員及び期中社員が対象となります。
 1981年の第1回講習開始から2023年迄,途中コロナ禍によりやむを得ず講習を中止せざるを得ない回を除き,43年間で計2,024人の方が受講され95%の合格率となります。コロナ禍以降は学科講習部分にオンライン講習を取入れる等時代の変化にあわせた講習スタイルを展開しております。

3.設備士養成講座内容

 設備士養成講習は法令,配管理論,実技の3部構成となっており法令については外部へ講師を委託しておりますが,配管理論及び実技については当社社員が講師を担当しております。講師は事前に経済産業省に登録する必要があり,講習を行う際には3 ~ 4名の講師が対応しておりますが専任ではない為,各回講習期間の2週間は通常業務と並行して対応しております。
 講習内容は決して簡単ではなく受講生は講習時間だけではなく,帰宅してからも必死にその日に覚えた内容を理解し翌日に臨みます。中にはこんなに勉強したのは十数年ぶりという方もいらっしゃいます。
 受講生は2週間もの間,業務を離れ講習に専念させてくれている会社の思いに応えようと必死です。そのような受講生の熱意に応えようと講師も毎日講習終了後には受講生からの質疑応答を行い,模擬試験の成績が思わしくない受講生には個別に指導を実施しております。実技講習は課題となっている配管を実際に組み立てる講習となります。パイプレンチを握るのも,ねじ切り機を使うのも初めてで最初は課題組み立てに2時間以上かかる方もおられますが練習を重ねると,みるみるうちに上達していき規定時間である1時間以内に組み立てが完了できるようになります。
 絶対に設備士試験に合格するという受講生の気持ちと,講師の絶対に合格して欲しいという思いが重なり教室は良い緊張感に包まれます。
 新入社員は数か月前まで学生でありガスの知識が全くないところから2週間でこの国家資格に臨みます。現場を知らない新入社員にとって,厳しい試験となりますが当社はセールスエンジニアとしてガス事業者様をご担当させて頂く為に必要最低限の知識であると捉えております。
 当社においてこの講習は人脈構築というもう一つの目的があります。設備士養成講習で2週間同僚と苦楽を共にすることによる人脈構築は講習を終え自身の勤務地に戻ってからも各自の大きな財産となります。
 最近の受講者の傾向として,水道や電気,空調等の工事業者様がガス工事も施工したいとのご要望で設備士養成講習を申し込みされるケースが増えたように感じます。この背景としては,設備士資格取得者の減少もありガス事業者様がこれまでの委託先に頼めなくなっていることから,新しい委託先を模索している状況があるそうです。
このような工事会社の方からは「設備士をどこでとったら良いか分からず困っていたがガス事業者様に相談したところ矢崎を紹介され受け付けてくれて助かった,全く取引のない業者を受け入れてくれてありがたい」とのお言葉をいただく事があります。
 当社の社是に「社会から必要とされる企業」があります。当社は設備士養成講習を通して,ガスエネルギー業界,ひいては地域社会のお役に立ちたいとの思いをもっております。

矢崎ガス機器トレーニングセンター

矢崎ガス機器トレーニングセンター

設備士養成講習実技室

設備士養成講習実技室

4.まとめ

 少子高齢化の影響により液化石油ガス設備士資格所有者の減少が懸念されます。先にも述べましたように設備士資格をもっていなければ工事,点検等できない事が多く有ります。また災害に強いLPガスは震災時等には仮設住宅のライフラインとして大きな役割を果たすことは周知の事実かと存じますが設備士資格所持者による供給設備工事が必要となります。このように我が国のライフラインとして大きな役割を果たすLPガス業界の維持・発展の為,当社は今後も設備士養成講習にて一人でも多く国家資格に合格して頂けるよう講習の内容について研鑽して参ります。
 当社は持続可能なガスエネルギー業界の一助となりますよう微力ながら邁進していく所存です。

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