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機関誌掲載記事

【機関誌特集記事】 猛暑から作業員を守る 会員企業の熱中症対策最前線(Vol.63 No.2)

ーアンケート結果からみる現場の取組と今後の課題-

一般社団法人 日本エルピーガスプラント協会

1.はじめに

 近年,夏季の猛暑が常態化する中,屋外作業や高温環境での業務が多い当業界において,熱中症対策は重要な安全衛生課題となっています。
 作業員の健康と安全を守るため,各企業ではさまざまな対策が進められています。
 そこで本誌では,会員企業を対象に熱中症対策の取組状況に関するアンケ ート調査を実施しました。本特集では,その集計結果を紹介するとともに,各社が現場で実践している具体的な取組事例をご紹介します。

2.アンケー ト調査の概要と結果

1)調査概要
  本調査は,会員企業における熱中症対策の現状を把握することを目的として実施しました。
  ・ 調査対象 :JLPA会員企業110社
  ・ 回答企業数:32社
  ・ 調査内容 :
    ① 熱中症対策の具体的取組
    ② 取組の効果
    ③ 課題・改善点について

2)アンケ ート結果
  回答結果から,多くの企業が装備・作業環境・教育の三つの観点から対策を進めていることが  
 分かりました。
  主な取組は下表のとおりです。
  最も多かった取組は,空調服(ファン付きウェア)の導入でした。回答企業の約8割が導入し 
 ており,夏季作業時の身体負担軽減に役立っています。また,WBGT計を活用した暑さ指数管理
 や水分・塩分補給の徹底など,基本的な熱中症対策も多くの企業で実施されています。
  これらの結果から,単に装備を支給するだけでなく,作業環境の改善や教育などを組み合わ 
 せた総合的な対策が進められていることがうかがえます。

3.主な取組事例

 ここでは,アンケ ートで寄せられた会員企業の主な取組事例をご紹介します。
1)作業環境の改善
  熱中症対策として,作業環境そのものを改善する取組を進めている企業も多く見られます。例
 えば,作業現場にタ ー プテントを設置して日陰を確保する取組や,休憩スペースの整備などが行
 われています。
  また, 空調設備を備えた作業スペースを設けるなど,現場環境の温度低減を図る工夫を行って 
 いる企業もあります。こうした取組により,作業員が安全に働ける環境づくりが進められていま
 す。

現場担当者の声
「日陰でしつかり休憩できる環境をつくることで,作業員の負担が大きく軽減されていると感じています。無理をさせない現場づくりを大切にしています。」

2)空調服・防爆対応装備の導入
 多くの企業で導入されているのが,空調服(ファン付きウェア)です。 空調服は衣服内に風を
送り込むことで体温上昇を抑え,作業時の負担軽減につながります。
 特にガス設備などの現場では,防爆対策が必要となる場合もあります。 そのため,防爆仕様の空調服を採用するなど,安全基準を満たした装備の導入が進められています。
 このほか,通気性の高い夏用作業服を採用するなど,作業服の改善による対策も行われています。

現場担当者の声
「空調服は夏の現場では欠かせない装備になっています。 導入後は作業員からも『かなり楽になった』という 声が多く聞かれています。」

3)WBGT値による暑さ管理
 暑さ指数であるWBGT値(湿球黒球温度)を活用した作業管理も,多くの企業で導入されています。WBGT値を定期的に測定し, 下記などを行うことで, 熱中症の発生を未然に防ぐ取組が行われています。
・ 作業時間の調整
・ 休憩時間の確保
・ 作業内容の見直し
WBGT値による管理は, 作業環境の危険度を客観的に把握できる点で有効な対策といえます。

現場担当者の声
「WBGT値を確認しながら作業することで, 暑さの危険度を客観的に把握できるようになりました。現場でも安全意識が高まっていると感じます。」

4)水分・塩分補給の徹底
 熱中症対策の基本となるのが, 水分と塩分の補給です。
多くの企業では, 下記の取組を行っています。
・スポーツドリンクの配布
・塩分タブレットの支給
・冷水器の設置
作業現場に飲料を常備することで, 作業員がこまめに水分補給できる環境を整えています。

現場担当者の声
「水分補給は碁本ですが, 忙しいとつい忘れてしまうこともあります。現場では『必ず休憩して水分を取る』ことを声掛けしています。」

4.会員企業の取組事例

1)事例① C社様
  ・WBGT計の活用        ・ファン付きウェアの着用 
  ・熱中症対策用ベストの着用    ・急速冷却用スプレーの活用
  ・ミスト扇風機設置        ・ローリー積場ミストシャワー設置
  ・教育実施等

【担当者様コメント】
 「上記の取組を実施し,熱中症対策の強化に大きく寄与しました。」

2)事例② 矢崎エナジーシステム(株)様
  ・ ファン付きウェアの支給・精用
  ・ 保冷剤も常備し,ウェア内に装着するなどの対応も可能にしている
  ・歩行や動きの多い作業に対してWork Mate(スマートウォッチによる体調監視)
  ・補給水(麦茶・水・スポーツドリンク)の常備・塩分補給のための飴の常備
  ・大型扇風機の配備・固定作業場所についてはスポット空調の設置

【担当者様コメント】
 Work Mate(スマ ートウォッチ)の導入により,常に管理者のPCに装着者の状態がアラートで飛んでくるため,異常を早期に気づけるようになりました。また,装着者本人も自分の健康状態がわかるため,早めに休息や水分補給を行うようになりました。

3)事例③ 九州高圧(株)様
 ・空調服の支給(防爆型)         ・WBGT計の活用
 ・冷蔵庫の設置              ・飲料用冷水器の設置
 ・大型扇風機,スポットクーラーの導入
 ・その他(クールネック・熱中症対策用タブレット・飴の支給)

【担当者様コメント】
「冷蔵庫,冷水器に関して,冷たい飲み物でこまめに水分補給ができるので効果がありました」

5.課題

 アンケート結果によると,多くの企業が上記の対策により, 熱中症予防に一定の効果があったと回答しています。一方で,いくつかの課題も指摘されています。
① 屋外作業は気象条件の影響が大きく,従来の対策だけでは十分な効果が得られない場合もあります。
② 設備導人に伴うコストの問題があります。空調設備や休憩施設の整備には一定の費用が必要です。
③ 作業効率とのバランスです。休憩時間の確保や作業時間の短縮は重要な対策ですが,業務の進行に影響を与える可能性もあります。そのため,作業計画の見直しなど, 業務全体の改善が必要となります。

6.おわりに

 今後は,設備対策・作業管理・健康管理を組み合わせた総合的な熱中症対策を推進していくことが重要です。特にWBGT値を活用した作業管理や休憩環境の整備など,科学的根拠に基づいた対策の導入が求められます。また,各企業の優れた取組事例の共有により,業界全体の安全対策の水準を高めていくことも重要です。
 本アンケ ートにご回答頂きました皆様に心より感謝申し上げます。本特集が,各企業における今後の対策の参考となれば幸いです。今回紹介できなかった事例は次号および弊会ホー ム ー ジで紹介いたします。

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