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富士工器におけるバルク20年告示検査の取り組みについて(JLPA機関誌 Vol.55 No.1,2018掲載)

本記事は、JLPA機関誌『ガスプラント』 Vol.55 No.1(2018), PP.11~14に掲載したものを著作者様の同意を得て掲載させていただいております。

富士工器株式会社

 富士工器は来年(2018年)より本格的に始まるバルク20年告示検査について,早くより取り組みを行ってきました。バルク貯槽は製造後20年経つと告示検査を行うか,くず化を行うことになり,これまでのただバルク貯槽を設置することから,撤去やバルク20年告示検査など新たな作業が増えることになります。それに伴い様々な問題や最悪の場合,事故の恐れも考えられます。
 このような中でバルク20年告示検査の様々な問題点を解決し,また安全に作業を行える手順について富士工器のバルク20年告示検査の取り組みを以下にご紹介いたします。

1. バルク20年告示検査時の注意すべき点

バルク20年告示検査にあたりバルク貯槽の撤去作業から移送作業,および残ガス回収までにおいて注意すべき点として以下のことが挙げられると考えます。
 ①バルク貯槽撤去作業時における転倒事故等のリスク
 ②バルク貯槽移動時における交通事故のリスクやトラック最大積載量の遵守
 ③残ガス回収貯槽の容量

 ①のバルク貯槽撤去作業時における転倒事故等のリスクでは現地での撤去作業を行う場合,ユニック車クレーンを使用することが多いと考えられます。
この時バルク貯槽の残液が多いとクレーン作業にはより注意を要し,最悪の場合にはバランスを崩して転倒事故,ガス漏れのリスクも考えられます。
 ②のバルク貯槽移動時における交通事故のリスクやトラック最大積載量の遵守については,現地より撤去したバルク貯槽をトラックにてLPガスの回収・廃棄作業を行う場所まで運搬する場合,バルク貯槽の重量や形状を考慮してトラックに固定する必要があります。特に竪型バルク貯槽については横型バルク貯槽と比較して重心が高く固定には注意が必要となります。またバルク貯槽の残液が多いとバルク貯槽の重心はさらに高くなり,運搬中におけるバルク貯槽内のLPガスの揺動について注意を払う必要があります。それに加えてトラックの最大積載量を遵守することも必要となります。
 ③の残ガス回収貯槽の容量については,バルク貯槽の残ガスを回収する残ガス回収貯槽は充てん所には少なく,再検査会社には多く存在していますが容量が小さいため,バルク貯槽の残ガス量が多いと残ガス回収貯槽に負担がかかることになります。
 ①から③について対応を行うためには,現地にて出来るだけ残液を減らすことが最も望ましい方法と考えられます。このため現地にて計画的に出来るだけ残ガスを減らす消費調整が行えるように液石法改正省令によって仮設を利用した場合の貯蔵能力合算規定が新設されました。(平成26年9月1日施行)
さらに高圧ガス保安法基本通達により,バルク20年告示検査やくず化を行う場合にはバルク貯槽を容器として扱ってよいことになりました。(平成26年7月14日公布・施行)この基本通達を反映してバルク貯槽移送基準の改正が行われ(KHKS 0840(2016),バルク20年告示検査やくず化の場合には複数移送が認められました。
 また現地で残液をなくし,残ガス圧力が1MPa未満にすれば高圧ガス保安法の適用ではなく「その他の容器」となります。
 さらに現地にてLPガスの消費を行うことはメータが回ることになり,ガスの売上げにつながります。

2. バルク貯槽用交換補助ユニットについて

 このようにバルク20年告示検査やくず化を行う場合には現地で出来るだけ残液(残ガス)を減らすことが重要となってきます。そのベストな方法は自動切替調整器を利用して残ガスを減らし,バルク貯槽移送基準の運用,さらに残ガス回収貯槽にて残ガスを回収する方法と考えられます。
 これらの手順を具体的に示したものが図1になります。自動切替調整器を利用することで出来るだけ現地にてバルク貯槽の残ガスを減らし,クレーンを使用したバルク貯槽の撤去時における転倒等の事故リスクを低減します。撤去したバルク貯槽はバルク貯槽移送基準に則って複数移送を行い,再検査会社等にある残ガス回収貯槽を使用して残ガスの回収を行います。現地にて出来るだけ残ガスを減らすことにより残ガス回収貯槽への負担も低減されます。
 富士工器ではこのベストな方法に対応すべく,出来るだけバルク貯槽の残ガスを減らす図2のバルク貯槽用交換補助ユニット(HJ4-33APH/S,HJ8-50APH/S)の開発を行いました。

図1.バルク20 年告示検査やくず化を行う場合のベストな方法

図2.バルク貯槽用交換補助ユニット

 このバルク貯槽用交換補助ユニットの特徴としては以下の点が挙げられます。
 ①自動切替調整器を用いてバルク貯槽の残ガスを優先消費
 ②専用の一次調整器にはガス放出防止器がセットされているのでバルク供給基準もクリア
 ③発信機能付自動切替調整器を用いるので仮設容器への切り替わりの監視も可能
 図3はバルク貯槽用交換補助ユニットのコンポーネントを示したものです。バルク貯槽用交換補助ユニットは組立・分解が簡単となっており,運搬も容易に行えます。
 図4はバルク貯槽用交換補助ユニットの使用方法を示したものです。原理は自動切替調整器と同じですのでこの交換補助ユニットを使用することでバルク貯槽内の残液はなくなり,残ガスの圧力は0.1MPa程度まで減圧することが可能となっています。

図3.バルク貯槽用交換補助ユニットのコンポーネント

図4.バルク貯槽用交換補助ユニットの使用方法

 バルク貯槽用交換補助ユニットの仕様を表1に示します。様々な現場に対応可能なように自動切替調整器の容量は33g/hと50kg/hの2種類を用意しています。
 バルク20年告示検査は来年(2018年)より本格的に始まります。富士工器としましてはバルク貯槽の供給は勿論のこと,これらの取り組みを通してバルク20年告示検査が円滑に進むよう取り組んでまいります。

表1. バルク貯槽用交換補助ユニットの仕様