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バルク貯槽のくず化に係る大静高圧の取組み(JLPA機関誌 Vol.57 No.1, 2020掲載)

本記事は、JLPA機関誌『ガスプラント』 Vol.57 No.1(2020), PP.11~13に掲載したものを著作者様の同意を得て掲載させていただいております。


大静高圧株式会社
取締役副社長 白砂伸之

 大静高圧グループでは,2014 年からバルク貯槽のくず化に取組んでおります。その中で当社が経験してきたことを説明しながら,現在までの処理状況についてご紹介いたします。
 2014 年頃は,移送に関していろいろと検討されている時期でした。当社では300 ㎏以下を中心に持込まれていたことや,ガス処理済みのバルク貯槽やバルク容器の引取り及び建物解体や閉店に伴う現地での引き揚げ作業によるもの等,数は少ないですが実施しておりました。当時はくず化基数も少なかったため,レンタカーでその都度対応しておりましたが,翌年からはくず化基数も多くなってきたことから,自社でユニック車を購入することとなりました。当社が選定したのは下記のユニック車になります。
 この車両を選定するにあたり4tユニック車も検討しましたが,レンタカーのユニックでつくづく思うのが4tユニック車では入るのに厳しい,しかしながら2tユニック車ではブームの段数が少なかったり積載量が少なかったりと,「帯に短し襷に長し」な部分がありました。よって,当社では3t車ベースで積載量が4t取れるものを選定しました。煽(アオリ)をシリンダーが運べる高さにし,パワーゲートを付けて,3 段ブームのクレーンを架装しても最大積載量を3.2t取ることができました。このサイズはレンタカーのユニックではまず見つけることができない仕様だと思います。唯一の欠点としてはその分車両重量が軽いため,1tバルクなどを吊るときにはカウンターウェイト等で調整しています。ちなみに4tユニック車で同じ架装をした場合には,最大積載量が1.9tしか取れず,車両重量の違いで積載量に逆転現象が起きてしまいます。

写真1 自社カスタマイズした輸送用車両

 次に受入れからくず化までの流れですが,ここでも当社で処理をしていく中でいろいろな経験が生かされております。まずは写真2 のように貯槽に直接書込みをして,作業工程がどの段階まで終わっているのか見える化をしています。これも2015 年に処理基数が増えるにしたがって,誰が見てもわかるようにと作業担当者が交代した時の作業ミスの低減と事故防止を兼ねて2015 年早々に実施しました。


写真2 受入からくず化までの流れ

ガス回収について,当社は休憩時間も活用しております。休憩時間を有効活用するために休憩前にガス回収の準備をしておいて,休憩するときにボタン操作等でガス回収を始めることで,300kg 位であれば15 分の休憩終了時にはガス回収が終わっています。また,内容積が大きくガス量の多いものなどは,気相部を加圧しながら残液回収をすることで回収スピードを上げています。このように限られた時間内で効率よく処理できるように努めています。

 残ガスの置換について,当社は水置換を行っています。設備としては隣接する工場の大型容器再検査設備を利用して水置換を行っております。大型容器である500kg や6,000L 容器は,バルク貯槽へ交換されたことにより数が減り,大型容器の再検査をやめてしまったところもありますが,当社では幸いにも一部のお客様で使用されていることと,一般高圧ガス関係でフロンのトン容器を再検査しており設備は通常稼働しております。現在ではこの設備を水置換の設備としても利用しております。
 当社の設備では,給水系統が2つあり再検査では循環再利用水を使用し,水置換では井戸水を使用しております。水置換で使用した水は気液分離槽へ入り分離槽から汚水槽へ移動します。汚水槽の水はポンプアップされろ過フィルターを通して清水槽へ送られ循環再利用水として使用しております。

表1 当社設備の注水と排水の時間関係

当社では水置換に関する設備増強をしております。汚水槽からポンプアップするポンプの能力アップと排水系統を1 系統増やして2 系統にしました。理由としましては,汚水槽へは通常のシリンダー再検査で排出される水も同じ汚水槽へ入る為,既存の設備のままでは能力不足になり排水処理が追い付かず溢れてしまう可能性があります。また,排水系統を増やした理由は当社設備の注水と排水の時間関係にあります。表1 を見て頂くとわかるように,注水に対して排水が約3 倍の時間が掛かる為です。
 このことから,注水と排水が同じ1 系統では排水がボトルネックとなり,同じ内容積の貯槽であれば常に排水待ちの状況になってしまいます。これを少しでも効率を高めるために,もう1 系統の排水を使うことで,注水が先に終わっても次の貯槽に注水を開始することができます。そして,この注水が終わるころには最初に排水していたものが,それほど時間を待たずに終了します。段取り替え(写真3)なども考慮しますと大体これでバランスがとれ効率良く処理できます。

写真3 段取り替えの様子

 最後にくず化について,当社では2014 年のバルク貯槽は当然のことながら,500kg 容器などの大型容器も以前からプラズマ切断機により穴あけ処理をしてくず化しておりました。プラズマ切断機を使用するようになった理由の一つとして,納品先の鉄くず業者との話し合いから「水置換をしてあるので安全なのはわかるが,ガスが抜けている確認の意味で,より確実なものとして火を使用してもらえないか」ということでプラズマ切断機を使用するようになりました。
 最近の当社でのくず化傾向としましては,内容積が大きいものが多くなってきました。初期の頃は300kg を中心にこれよりも内容積が少ないもので,最近では500kg と1t貯槽が多くなり逆に300kg が少なくなりました。また,関係者団体からもいろいろとアナウンスされていたのと,ガス販売事業者様の意向が合致したのか当社においては冬の繁忙期を除いた時期を中心に,バルク貯槽の入替等をして頂いている為,比較的円滑に進んでいることを関係各社に感謝の意を申し上げます。

表2 大静高圧グループのくず化実績

 最後までお読みいただきありがとうございました。実績と経験がある程度はございますので,実務的な部分でご相談等ございましたら,可能な限りご回答させて頂きますので今後ともよろしくお願い致します。