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株式会社石油ガス工事における現場の安全への取組み(JLPA機関誌 Vol.58 No.2, 2021掲載)

本記事は、JLPA機関誌『ガスプラント』 Vol.58 No.2(2021), PP.17~22(訂正版再掲載は、Vol.58 No.3(2021), PP.17~22)に掲載したものを執筆者様の同意を得て掲載させていただいております。


株式会社 石油ガス工事
代表取締役 後藤 博

1. まえがき

 株式会社石油ガス工事は創立昭和44 年,今年52 年目を迎えます。設立以来,高圧ガスプラント検査業務,LP ガスプラント設備工事及び高圧ガスタンクローリの再検査業務,LP ガスタンクローリ載せ替え架装工事を主体とする業務を営んできました。
 指定保安検査機関,KHK 認定検査会社,宮城県の容器検査所,高圧ガス製造所としてLPG 業界の発展とともに活動して参りました。
 近年ではバルク貯槽の20 年検査関連に伴い,貯槽入れ替え,撤去,廃棄作業も増えてきています。
 プラントの検査と工事,タンクローリ再検査と架装工事をこなすため,工場内作業,現場作業,屋内,屋外と環境が違うなかでそれぞれの安全管理体制が求められ,それをすべて全うするよう日々安全対策を考えながら作業を進めています。

2. 概要

 仙台本社,白石工場と別々の地域で活動しているため,労働基準監督署は仙台と大河原の別々の場所に届け出書類を提出し,労働安全衛生関連法令に則り,監督署のご指導のもと衛生管理者を選任し,各種報告をしています。
 仙台本社と白石工場とで,別々に月例会議,労働安全衛生会議を毎月行っていますが,全員が集まる全体会議を年に2 度開催しています。3月末に各県の方針,検査基準等を,12 月に検査,工事の不具合等の報告等を共有することを目的として企画しています。
 協力会社として検査・工事を行っているところについては,元請け会社の独自の労働安全管理,方針があるので指導の下,定期研修を受講し,必要な資格があればその都度取得し,資格が失効しないよう有効期間内に更新をしています。

3. 詳細

(1)白石工場 タンクローリ再検査・架装・容器検査グループ 工場での作業に従事する者
1)朝のラジオ体操 … 体を柔軟にし,心身をリフレッシュ,その日の自身の体の状態を把握し,怪我等をなくすため行っています。

朝のラジオ体操

2)事務所,休憩所,トイレ,工場内の清掃 … 輪番制により,全ての人が順繰りで全ての箇所を回るように割り振りしています。
3)朝礼,KY 活動,夕礼 … 朝礼では輪番制で,その日の当番者が会社全体の工程を発表し,その後工場内作業工程に基づき,再検査車両毎,耐圧検査容器毎の詳細作業を公表し,残ガス処理の有無,重量物吊り上げ作業の有無,搬入車輌・搬出車輌の有無・時間等の詳細を確認後,それらに対する危険要因を指摘し,危険予知を話し合うようにしています。
 残ガス処理を行うときは消火器の配置を確認後,工場入口の赤パトライトを点灯させるようにしています。残ガス処理中の表示を掲げて,工場内作業者全員で注意喚起を促すようにしています。当番者が毎日必ず確認しています。

 朝礼の最後に日捲りカレンダーの今日の一言の文言を持ち出し,今日の安全作業に繋がるような話を担当者が併せて発表することにしています。
 夕礼ではそれぞれの進行状況が工程通り進んだか,危険な作業はなかったか,不具合等はなかったか,不足品はなかったかなどの確認を検査車両責任者ごとに報告させて,工場で働く人が共通の情報を認識し白石工場ワンチームとして作業に取組むことにしています。

朝礼の風景

国道出入口パトライト

4)ブザー・黄色パトライト点灯にて交通事故防止 … 工場より国道に出るとき,歩行者・通行車輌との衝突を防止するため,出入時ブザー音を発報し黄色パトライトを点灯させ外部通行者の人からひとめでわかるようにしています。
5) Web カメラによる本社との交信 … 本社でも白石工場全体の作業工程,状況確認が瞬時にわかり交信できるようなシステムを導入しています。
6) メガホン・ホイッスルにて誘導 … 工場内車輌移動,検査車両のバック時には必ず助手を付けさせて,衝突させないようメガホン・ホイッスルにて誘導することにしています。
7) 専用昇降用階段,専用レールの製作 … タンクローリマンホールが鏡板中央横側にあるため,怪我無く人が容易に出入りできるよう自社製の踊場付階段を製作し検査車両毎に設置することにしています。またタンクローリ缶体上部で作業するときには命綱がスムーズにスライドして人が動けるような自社製の専用レールを製作し取り付けています。

ローリ再検査用昇降階段

専用レール

8)工場屋内の換気 … 工場屋内ではタンクローリ缶体内のエアー置換作業,溶接作業,サンダー掛け等の作業が行われているので要所に大型ブロアーを設置し常時回しておき空気がよどまないよう換気には十分注意しています。
9) 夏季の熱中症対策 … 夏季のタンク内部作業時の熱中症予防のため,要所にスポットクーラーを設置しています。夏季には冷水器を用意し,そのほか経口補水液やスポーツドリンク,塩飴等も準備提供しています。

夏季熱中症対策

10)重量物吊り作業時の厳守事項 …タンクローリ缶体吊り上げ作業,耐圧検査終了後の缶体取り付け作業は複数人で行うのですが,一人の合図者・責任者の下,指示に従い吊り荷作業を行うことにしています。部外者は吊り荷区域には入らないことにしています。
11)安全に関するポスターや垂れ幕の設置 … ポスターは工場内,事務所内に掲示しています。各工場外壁には安全標識垂れ幕類を取り付け,外部入場者にも目に付くところに掲げています。
12)安全データシート(SDS)の掲示等 … 有機溶剤,特別有機溶剤等の作業個所にはSDS を見やすいところに掲示しています。作業責任者を選任し職務に対する注意事項を掲示しています。特定化学物質作業責任者も併せて選任し掲示(写真は〇〇〇〇で表示)しています。有機溶剤・特定有機溶剤は所定の保管庫に保管しています。

安全標語掲示表示

安全データシート(SDS)の掲示等

13)クレーン・フォークリフトの管理 … 月例点検,年次点検を行っています。
14)刻印・打刻時の騒音の注意 … 打刻音が甲高く響くとの苦情がたまにあるので,満水時に行う,缶体にゴムを巻き付ける,シャッターを全閉にする等の対処策を実施しています。
15)バルク貯槽廃棄の注意 … バルク貯槽廃棄処理の依頼を受け持ち込まれる場合,残ガス量,マニフェストの有無の確認,荷下ろし場所,保管場所等を決めたのち残ガス回収を行います。水置換にて行ったのち,換気後ガス検知をし,胴板を30cm 四方に溶断処理します。
 この時も重量物吊り上げ時の挟まれ事故,墜落事故防止の注意をしながら行います。溶断の時には火気制限区域の確認,消火器置場の確認,火傷の注意をし,付属品取り外しの時はとも回りで転倒事故防止の注意をし,二人一組での作業を行うようにしています。
16)地元警察署に出向いての交通安全講習受講 … 白石工場勤務者全員,現場作業従事者は毎年12 月に白石警察署に出向き交通安全講習を受講しています。
17)防災訓練 … 毎年6 月に地元白石消防署の方に白石工場へ来ていただき,防災訓練を行っています。終了後,講評をいただき緊急時の実践に備えるようにしています。緊急時には貯水槽だけでは水量が限られているので近隣からの火災をも想定し,可搬式ポンプを用い白石工場隣に流れている白石川分流の白鳥川からの給水ができるよう消防署の許可をとりたいと思っています。川から給水できれば,燃料が続く限り安心して放水できるようになるので常に連絡は密にしていきたいと考えています。

防災訓練

18)教育訓練 … 入社時には外部講師に依頼し,雇い入れ時の安全作業の基礎講座に参加させています。その後工場内にて高圧ガスの基礎,工具機械・計器類の取り扱い,と順次に教育し,1 年目は主に白石工場にて補助作業をしながら少しずつ本作業に従事させるようにしています。引き続き職長教育,管理者責任者講習と順を追って経験を積ませています。
19)タンクローリ再検査作業手順書を掲示 … レギュラーローリ,ガスコンプレッサ式バルクローリ,液中ポンプ式バルクローリの作業手順書看板を残ガス処理場所と耐圧検査場所の二ヵ所に掲示しています。

タンクローリ再検査作業手順表示

20)新型コロナウイルス・インフルエンザ対策 … 毎日体温測定記録,マスク着用,手洗い,3密を避ける,事務所内ではビニールの仕切りといった感染防止対策の実施,自宅での生活でも個々人が気を付けるよう注意喚起しています。
(2)プラント検査・工事グループ 主に現場での検査・工事作業に従事する者
1)各現場・出張先でのKY 活動 … 各現場においては自社の労働安全衛生基準,作業手順のほか,その事業所の独自のものを加えて柔軟に作業に取組むことにしています。開始時間,終了時間もその事業所に合わせて行い,休憩場所,時間,作業場所など確認したのち作業に取りかかることにしています。その日の工程に見合った者を交え,朝礼,KY 活動,夕礼を各現場にて行っています。KY 活動内容,その日の作業内容につては毎日本社にFAX 等にて報告することになっています。
2)火気制限区域・電動機器使用個所 … 火気制限区域を確認し,電動機器類の使用場所を決めて事業所からの使用許可をいただき,指示のもと作業を開始するようにしています。
3)消火器の配置,防火用水 … 作業個所に消火器を配置し作業を行う,出発前に有効期限,使用方法の確認を行う,火気を伴う溶接等の作業の時には防火用水,スパッターシート等の準備もしています。
4)高所作業 … タンク上部での作業時は転落,滑り,落下しないよう細心の注意を払い行うこととし,作業者が工具・ボルト等を落とさないよう注意をし,タンク下部での作業者がいないことを確認してから作業を行うようにしています。フルハーネス型安全帯を着用し必ず強固な箇所に絡みつけて検査作業等を注意して行うこととしています。
5)協力会社として従事する場合 … 元請け会社からの依頼で検査工事に従事する場合は元請け会社の安全管理規定,作業基準に基づき行うようにしています。資格証,手順書等をその都度確認し取りかかることにしています。
6)安全標識掲示・タンク内作業 … タンク内作業時はタンク内部で作業をしている旨の垂れ幕を掲げ,マンホール・ノズル付近に人を配置し,換気・タンク内温度に注意しながら定期的に声をかけて,安全に作業を進めているかどうかを確認するようにしています。
7)新型コロナウイルス・インフルエンザ対策 … 現場先で体温測定をし,近日中の体温記録を提出し,マスク着用,手洗い,3 密を避けて個々人が注意をしています。
8)夏季の熱中症対策 … 夏季のタンク内部作業時の熱中症予防のため,換気を十分にし,タンクに散水をし,少しでも内部温度を下げる工夫をしています。そのほか冷たい水を十分飲むようにし経口補水液やスポーツドリンク,塩飴等も併用しています。
(3)会社全体としての取組み
1)インフルエンザ予防接種 … 毎年インフルエンザ予防接種を本社・白石工場全員に接種を奨励しています。
2)新型コロナウイルス対策 … 本社,白石工場,現場ではそれぞれマスク着用,消毒液の設置,3 密を避ける,定期的に換気を行う,来訪者がある場合は対面でなく斜め向かいに座るなどの感染防止対策を実施しています。
3)健康診断の受診 … 毎年通常の健康診断を受診するほか,年齢に応じた検査項目を増やしての受診を行うようにしています。溶接作業従事者,有機溶剤作業従事者,特定化学物質作業従事者にはそれに応じた特定業務健康診断,特定化学物質業務健康診断をも併せて受診させています。
4)産業医による健康相談 … 健康診断後,指摘のある人については健康指導相談委員を招いて個人面談の後、健康指導をしていただいています。
5)協力会社で行う安全協力会議に参加 … 各会社の安全協力会議に参加し,研修会,工事現場安全パトロールに参加しています。
6)資格取得の推奨 … 高圧ガス作業責任者,非破壊検査技術者のほか工場,現場で必要な溶接,フォークリフト,有機溶剤作業責任者,安全衛生推進者,管工事・電気・建築・土木施工管理者等の資格取得についても推奨しています。
7)全体会議 … 会社全員参加の全体会議を3 月末と12 月末に行っています。3 月は保安検査が4 月から始まるため各県の動向,検査基準等が変わってないかを確かめるものです。新年度に向けて検査員・検査従事者全員が共有し検査に臨むため行っています。
 12 月には1 年間施工したプラント工事,保安検査時の良かったこと,悪かったこと,タンクローリ再検査時の検査全般について,工事の施工個所の写真等の確認などを行っています。事故や怪我をなくし,クレームゼロを目指し開催しています。

年末全体会議風景

8)健康に関する講話 … 総合病院の専門マネージャーを招き健康維持に関する講話を全体会議の折,お話をいただいています。
9)禁煙の推奨,分煙の実施 … 本社は禁煙,白石工場は分煙で進めています。喫煙者が少なくなるよう働きかけをしています。
10)健康経営優良法人企業 … 健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)に認定されました。(2021 年3 月)
11)社内報を配布 … プラント検査グループは出張が多く社員全員が一堂に会することが難しいため社内報として月1 回のかわら版を発行し必要事項を伝達しています。

4. まとめ

 「安全は何よりも優先しなければならない」を遵守しなければ事業の継続,行く末はないものと思わなければなりません。
 安全にもいろいろあり作業の安全,交通安全,心身ともに健康であることすなわち体の安全などがあります。
どれか一つ欠けても企業の安全運行はできなくなります。それぞれを維持するため各々様々な工夫を凝らしながら日夜試行錯誤していかなければなりません。
 現場の安全への取組みもこれらの安全を平衡に保つことから始まるように思います。
 顧客との信頼関係を築き上げ,協力会社,仕入れ先との信頼関係を成就し,取引会社との助言に耳を傾けることにより,自社独自の労働安全衛生基準が自然と生まれるのではないかと思います。自分一人でできるものではなく全員が一丸となって進むことによりそこに到達できるのではないでしょうか。
 日頃より些細な事柄にも耳を傾けていく姿勢をもち,良いものはすぐ取り入れることにより少しずつ良いものが出来上がっていくものであると思います。
 失敗は失敗として受け入れ,同じことを繰り返さないよう皆で戒めながら行っていくことが将来に向けて大事であると思います。
 これまでのものを形骸化することなく,良いことは一つ一つやれることからチャレンジしていく精神をもって社員一丸となり取組んでいきたいと思います。
 安全に取組むには,社員一人一人のルーティング,会社としてのルーティングを持つことが大事であると考えます。